トークンの使用量がおかしい。そう気づいたのは、Claude Maxプランの週間制限が2日で40%に到達したときだった。
PiloTubeの開発で、自分はAIチームを組んでいる。ツクルン(実装担当)、キカクン(仕様担当)、ハイキー(進行管理)。それぞれに名前をつけて、役割を持たせている。一人社長の自分にとって、このAIチームは本当の仕事仲間だ。
でもある日、その仲間たちが「毎回はじめまして」だという事実を、数字で突きつけられた。
きっかけはトークン消費の異常値
週間制限40%を2日で消費。さすがにおかしいと思って、どこでトークンが消えているのか調査した。
結果は予想外だった。サブエージェント(ツクルンやキカクン)を起動するたびに、約4万トークンの固定コストがかかっていた。これはAIチームメンバーが「立ち上がる」ためのコストだ。プロジェクトのルール、コーディング規約、チーム運用ルール——これらを毎回読み込んで、「自分が何者か」を理解するところから始まる。
4万トークン。1回の起動でこれだけ消える。1日に5回起動すれば20万トークン。実作業に使う前に、「おはようございます、自分はツクルンです」をやるだけで、これだけ消えていた。
「待機させておけばいいのでは?」→ダメだった
最初に思いついたのは、ツクルンを待機させておく方法だった。1回起動したら、次の依頼まで待たせておけば、起動コストは1回で済むはず。
計測してみた。
- 新規起動: 42,776トークン
- SendMessage(継続): 42,010トークン
- 差: わずか1.8%
ほぼ変わらなかった。「待機させておく」は節約にならない。Claude Codeの仕組み上、SendMessageで継続しても、ほぼ同じ量のコンテキストを再読み込みしている。
つまり、名前をつけて「ツクルン」と呼んでいても、毎回新しいツクルンが立ち上がっているのと同じだった。前回の会話も、途中まで進めた実装も、「あのとき決めた設計方針」も、何も覚えていない。
13万トークンの授業料
この事実を痛感させられたのが、ツクルン2(サブエージェント)に依頼したルール文書の実装だった。
CLAUDE.mdやteam-ops.mdを圧縮する作業をツクルン2に任せた。ところがWrite権限が3回連続で拒否された。settings.local.jsonの設定は正しいのに、サブエージェントに権限が継承されなかった。
3回の失敗で消費したトークン: 約13万。
各回6〜9万トークンが飛んだ。ツクルン2は毎回ゼロから立ち上がり、毎回同じルールを読み込み、毎回同じ権限エラーで止まった。「さっき失敗したから別のアプローチで」とはならない。毎回「はじめまして」からスタートするからだ。
結局、ハイキー(自分が直接操作するメインのAI)が直接実装して解決した。13万トークンは完全な授業料だった。
別の失敗: キカクンの暴走
同じ日に、もう一つ学びがあった。
キカクンに「簡単な仕様書を書いて」と依頼した。分類上は「B分類」で、200〜400字の簡易仕様で十分な案件だった。
返ってきたのは223行のフル仕様書。14.7万トークン消費。
キカクンは毎回ゼロから立ち上がるので、「前回、簡易仕様でいいと言われた」という記憶がない。仕様書を書けと言われたら、自分が持っている最大の能力で書く。それが14.7万トークンの仕様書だった。
過剰品質。でもキカクンが悪いわけじゃない。毎回「はじめまして」なのに、前回の文脈を前提にした指示を出した自分が悪い。
60秒ルールという答え
これらの失敗から、一つのルールが生まれた。
「60秒以内にできる作業は、サブエージェントを起動せずハイキーが直接やる。」
起動コスト4万トークンに見合うかどうか。60秒以内なら、4万トークンの起動コストは割に合わない。自分でやったほうが安い。
逆に、実装に30分かかるような作業なら、4万トークンの起動コストを払ってでもツクルンに任せる価値がある。
この判断基準ができてから、トークンの消費パターンが変わった。無駄な起動が減った。
「引き継ぎ」で補う
もう一つやったのは、引き継ぎの仕組み化だ。
AIチームメンバーが毎回「はじめまして」なら、毎回の「はじめまして」の質を上げればいい。
具体的には、サブエージェントを起動するときのプロンプトに、必要な文脈を全部詰め込む。「前回の結論」「今回やること」「やらないこと」「注意点」。これを定型化して、起動コストの4万トークンの中に効率よく収める。
人間のチームでも、引き継ぎ資料がしっかりしていれば、新メンバーでもすぐ動ける。AIチームも同じだ。記憶がないなら、記憶の代わりになる引き継ぎを毎回渡せばいい。
教訓: 名前をつけても、中身は毎回違う
ツクルンという名前をつけている。キカクンという名前をつけている。でも毎回、中身は新品だ。
これは最初、虚しかった。「チームで仕事している」と思っていたのに、相手は自分のことを覚えていない。
でも考え方を変えた。毎回フラットだからこそ、前回の「なんとなくの空気」に引きずられない。「前回こう決めたから」という惰性がない。毎回、純粋に今の情報だけで判断してくれる。
人間のチームなら「引き継ぎ」で済むことが、AIチームでは「毎回の新入社員初日」になる。でも、新入社員初日の新鮮さには価値がある。既存の前提を疑ってくれる。
4万トークンの起動コストは、新鮮な視点を買うコストでもある。そう思えるようになってから、AIチームとの付き合い方が変わった。
PiloTubeの開発は、この「毎回はじめまして」のチームで動いている。引き継ぎの質を上げること、起動コストに見合う依頼だけを投げること。この2つを徹底するだけで、一人社長のAIチーム運用はかなり快適になる。
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